だから。

快晴。


神戸に行った。

仕事をしたわけじゃないので、ただの旅行だ。

逃げてきたの？と訊かれた。

そんなつもりは全然なかったけど、そう思われても仕方ないだろう。

お芝居とお芝居の狭間で、どこかへ遊びに行こうと思っていたのだ。

でも、そんな気になれなかった。

働いてる人もたくさんいるし、戦ってる人もたくさんいるし。

僕には助けに行く方法もないし、行っても役に立ちそうもないし、寄付とかも小さな身を切り売りするだけのような気がして。

今は何もできない。

元々、たいしたことはできない僕だから、お芝居くらいしかできない僕だから、今は休もうと考えた。

たぶん、出掛けて行ったことは、よかったと思う。

キャラメルボックスどんどんやってよ。観に行くし、一緒に募金もやればいいよ。

そう言ってもらえた。

キャラメルボックスやらなきゃだめだよ。応援するからさ。

神戸の人が、そう言ってくれた。

16年前、どこにも灯りのない三ノ宮の街で、赤い提灯つけて、かろうじて繋がったガス焚いてお店をやってたら、どんどんどんどん人が来るんだよ。

やってますか？やってるんですねって、安心したように来るんだよ。

だから昼間もお店を開けといたんだよ、誰かが来るかもしれないから。誰も来なかったけど。

街の灯だ。

これが街の灯なんだ。

僕に灯せるのが、演劇の灯だけなら。それはやはり、つけなきゃいけないんだ。
その場所は、開けなきゃいけないんだ。

こうこうと灯りをともして。


だから、神戸に行ってよかったと思う。

こっちにおいでよとも言われたけど、僕は東京に帰る。

そこで演劇という小さなお店を開くのだ。小さな灯りをともすのだ。



今日も、お元気で。



今日も、ありがとう。